今回は法第11条「名義貸しの禁止」について解説します。名義貸しは、許可制度を根底から危うくする行為であり、罰則は重い。それでは内容を見ていきましょう。
(1)そもそも名義貸しって?
(名義貸しの禁止)
第十一条 第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない。
「名義貸し」とは、他人のために自己の名前を契約や申請の当事者として利用させる行為です。
名義貸しには様々なケースが想定されますが一般的にはなんらかの事情で契約や申請が認められない者が他人の名前を借りて許可を通したり契約する行為が想定されます。
例えば、金融情報がブラックであるためにお金を借りることが出来ない者が他人に借りてもらうというような具合です。風俗営業においては、人的欠格事由に該当したため許可を受けれない者が他人の名前で許可申請をし、実際の経営はその欠格者が行なう場合が想定されます。
(2)なんで名義貸しはいけないの?
先程の例では、お金を貸す銀行等の貸金業者は、借りる人Aを信頼し、Aに対してお金を貸し出す契約をしたのに、実際には金融ブラックで定職についているかも怪しいBがAを通してお金を借りていた場合、貸金業者を裏切る契約をしたといえます。この場合、Bは詐欺罪、Aは幇助犯として罰則の対象となります。
(3)風俗営業での名義貸しとは?
話しを風俗営業に戻します。風俗営業における名義貸しの定義は「風俗営業の許可を受けた者が、自己の名義をもって、他人に風俗営業を営ませること」をいいます。
さらに一歩踏み込むと
「許可を受けた者が、自ら直接風俗営業を営まず、単に表面的に自己が営業者であるように装って、実質は他の者にその計算において営業を営ませ、自らは営業の主体とならない」
ということが出来ます。
(4)具体的にはどんな感じ?
【例1】
Aが許可を取得し、Bに営業を営ませた場合、Aは名義貸し違反となり、Bは無許可営業となる。
【例2】
個人事業としてCLUB甲という風俗営業を開始したCが法人成りし、合同会社Dを起ち上げ、Dの名でCLUB甲の営業を行なった。この場合はCはDに対する名義貸し違反となり、Dは無許可営業となる。
例1は典型的な例。注目していただきたいのは違反者となるのはA(名義を貸した人)だという点です。
例2は、風俗営業許可には今のところ許可の承継制度(第7条「相続」を除く)がないため、基本的にはCが許可を取下げて、Dの名で新たに許可を取得する必要があります。ただし、仮に法人を起ち上げたとしても、CとDのお財布をしっかり分けるなどしてC個人名義で営業を営んでいれば名義貸しには当てはまらないとされます(某県警察本部担当者談)。
(5)業務委託ってどうなの?
営業の一部を業務委託や請負で外注したとしても通常は名義貸しとなりません。そもそも風営法は店舗の責任者として「管理者制度」が存在し、人に任せて営業を行なうことが予定されています。むしろ許可名義人は、営業は管理者に任せて複数店舗を展開し、意志決定により各店舗の業績を上げていくのが理想的です。店舗の営業実務にタッチしていなかったとしても重要な意志決定など、経営実態と許可名義人が一致していることが重要であるといえます。
(6)違反の効果
令和7年の改正前は2年以下の懲役、200万円以下の罰金であったが大幅に強化された。
【行政処分】
量定区分 A
原則許可取消し。情状により営業停止命令。
指示処分前置は不要。
【罰則】
五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
POINT
✅他人のために自己の名前を契約や申請の当事者として利用させる行為。
✅名義貸しは、契約等の相手方を裏切る行為であり、詐欺罪が成立する可能性も。
✅貸した側が名義貸しとなり、借りた側は無許可営業。
✅個人から法人なりした場合は個人店舗の営業主体に注意。
✅風営法はそもそも人に任せて営業する仕組みになってる。
✅経営実態と許可名義人が一致していることが重要。
外部リンク
・かおるTV(YouTube)
・悪質ホストクラブ対策について(警視庁HP)
・栃木県風俗営業許可関係
・群馬県風俗営業許可関係
・埼玉県風俗営業許可関係
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令
