民法960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
🔶遺言事項
遺言は相手方のない一方的な単独行為であるため、遺言で定められる内容が法定されています。
大まかには以下のような事項です。
・法定相続人に関する事項
・財産の処分に関する事項
・遺言の執行、撤回に関する事項
・家族の身分上の事項
・その他、祭祀主催者や保険金受取人の変更など
これら以外の事項(感謝の言葉、葬儀の方法、残された配偶者の扶養方法など)は、「付言」に記載することになります。ただし、付言に法的拘束力はありません。ですが付言を上手に活用することにより法定相続分とは異なる指定を相続人に納得させることができる場合があります。
遺言の種類
世間一般では「遺言」と一言で説明されている遺言ですが、実は種類があります。
すなわち、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。
民法967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によるこ とを許す場合は、この限りではない。
以下にそれぞれの作成方法と特徴を記載します。
自筆証書遺言
●作成方法
・遺言者が遺言の内容・日付・氏名を自ら手書きして印鑑を押さなければならない(民法968条1項)。
・相続財産の全部または一部のリスト(財産目録)を添付する場合は手書きじゃなくても大丈夫ですが、この場合はリストの各ページに署名して押印する(民法968条2項)。
●特徴
〈メリット〉
・自分ひとりで作成できるため費用がかからずに気軽に作成することができる。
〈デメリット〉
・気軽にできるからこそ信憑性が低い(そのため家庭裁判所による検認が必要)
・目録以外全部手書きだから書くのが大変
・書き間違えた場合の訂正や加筆が非常に厳格(民法968条3項)
・自分で保管する場合はみつからない可能性もある(法務局の「遺言書補完制度」有り)
このように気軽にできるからこそのメリットとデメリットがあるのが自筆証書遺言の特徴といえるでしょう。
公正証書遺言
●作成方法
・公証人と証人2人以上の立ち会いの下に公証役場で作成し、立ち会った者と遺言者それぞれが署名・押印して完成する(民法969条)。
●特徴
〈メリット〉
・公正証書(元裁判官や検事である公証人が作成する公的な書類)なので、遺言の内容がかなり高い確率で実現されるし、家裁の検認が必要ない。
・自分で手書きする必要がないので文章の長さを気にする必要も無く、文章が書けなくても作成可能(署名を書くことが難しければ公証人が代筆できる)。
・もし動くことが出来ない場合でも公証人が自宅や病院に出張してくれる。
・遺言書の原本を公証役場で保管してくれるので無くしたり、誰かに変造される危険が無い。
〈デメリット〉
・公証人手数料は日本公証人連合会のホームページで確認できますが高額です。
・筆記の必要はありませんが戸籍謄本や財産を証明する書類など、これはこれで遺言者の負担が大きい。
・公証人や証人に内容を知られてしまう(守秘義務はあるが)。
ほぼ確実に遺言の内容が実現される公正証書遺言ですが、費用・労力とも遺言者の負担が大きいことも特徴です。
秘密証書遺言
●作成方法
・公証人と証人2人以上の立ち会いの下に公証役場で作成されるが、内容は自分で作成する(パソコンの使用も可能)。作成した証書に氏名と印鑑を押して封をして、証書に押したのと同じ印鑑でさらに封印する。
・公証人は遺言者が作成した封書に法定事項を記入し、遺言者と立会人の署名と押印によって完成する。
●特徴
〈メリット〉
・署名・押印さえできれば筆記する必要がなく他人が作成したものでもかまわないし、戸籍謄本等も必ずしも必要でないため遺言者の負担が少ない。
・公証人手数料も内容にかかわらず1万1千円と安価。
〈デメリット〉
・パソコンで書いたり他人が作成しても構わないため、高齢者や判断力の弱った者に無理矢理書かせる危険がある(そのため廃止論さえある)。
・公証人は内容まで公証していないため、作成に法律家が関与していない場合は意味不明な遺言になる可能性もある(自筆証書遺言の場合も同じ)。
・遺言書の原本の保管は公証役場でおこなっていないため、紛失の可能性もある。
安価で労力少なめに作成できるため、病気で身体が不自由な場合や、まだ内容がはっきり固まっていないが遺言を残しておきたい場合など(変更の可能性が十分ある場合)に活用すると良いでしょう。
以上が法定された普通方式遺言3種類です。ご自身の状況に合わせて最適な遺言を作成して頂けたらと思います。
当事務所では遺言書の作成・相続関係説明図の作成・財産目録の作成・遺産分割協議書の作成、そして遺言の執行をおこなっております。
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