令和7年に悪質ホストクラブ問題で新たに追加された22条2についてご紹介します。
第1項 客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
第二条第一項第一号の営業を営む者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済(次号において「料金の支払等」という。)をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。
・わかりにくい条文であるが「客に注文をさせたり、営業の料金を支払わせる目的で脅すこと」をしてはならないという内容である。
・条文のうち「第二条第一項第一号の営業」とは、キャバクラやホストクラブなどの「社交飲食店」を指す。
・「料金の支払その他の財産上の給付」の具体例として解釈運用基準では以下が例示されている。
○ 「売掛金」等と称される料金の事後の支払(いわゆる「掛払い」や「ツケ払い」)
○ 接客従業者が客に代わって料金を接待飲食営業を営む者に支払った場合(いわゆる「立替え」)における当該接客従業者が当該客に有することとなる求償権に係る債務の弁済
○ 接待飲食営業を営む者と客との間で飲食等の提供の日時や内容が特定された合意がなされており、注文に係る契約が成立していると評価できる場合における「前入金」等と称される料金の事前の支払
○ 接待飲食営業を営む者や接客従業者が、客に対して来店頻度や利用額を増やすよう求めるなどした場合における将来の来店時に発生する料金の支払
○ 違約金等の名目による金銭の交付のほか、応援する接客従業者に対して行われる贈与(いわゆる「おひねり」)
「売掛金」をはじめ、「従業者が立て替えた場合の求償権」「前入金」「違約金」「おひねり」など、社交飲食店においてしばしば行なわれる金銭の授受・請求の形態が掲げられている。
(1)「財産上の預託」とは
・例えば、ホストクラブなどの店(接待飲食営業を営む者)と客との間で将来飲食等をした際の料金に当てる目的で、客が営業者(又は接客従業員)に預ける金銭で「前入金」等と称される金銭の預託が該当する。
(2)「金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済」とは
・ホストなどの接客従業者が営業活動において料金相当額の金銭を客に対して貸し付けることによって、客がホストクラブなどの店に料金の支払を行った場合の、客がホストに対して支払う貸金債務の支払。
・接待飲食営業を営む者が客との間で、客の飲食料金等の支払債務を貸金債務とした場合における当該債務の弁済等が該当する。いわゆる「売掛金」である。
(3)「威迫」とは
人を恐怖させるまでには至らなくとも、言語・動作・態度をもって気勢を示し、相手に不安・困惑の念を生じさせる行為をいい、例えば、客に料金を支払わせるために声を荒げること等が該当する。
(4)「困惑」とは
困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。
第2項 威迫や誘惑による料金の支払等のための売春等の要求
二 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために当該客が次に掲げる行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること。
イ 売春防止法その他の法令に違反する行為をすること。
ロ 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為等(性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下ロにおいて同じ。)を触り、若しくは当該他人に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること。
ハ 第二条第六項第一号若しくは第二号又は第七項第一号の営業において異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること。
ニ 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号)第二条第三項に規定する性行為映像制作物への出演をすること。
ホ 外国において売春をすること。
(1)概要
・イ~ホに関しては「AV出演」「海外売春」を含むほぼすべての「エロい行為」が含まれる。
・「客に対して、脅したり誘惑したりして、料金の支払のためにエロい行為で財産を得る事を要求する事」という意味である。
(2)「誘惑」とは
甘言を弄して相手方を動かし、その判断の適正を誤らせることをいい、解釈運用基準では以下が例示されている。
① 「ホストとして成功したら(客と)結婚したい。そのためには、売春してもっと売上げに貢献してほしい」
② 「ソープランドで働いてもっと店に来てほしい。そうしたら一緒に住もう」
違反の効果
量定区分 B
40日以上180日以下の営業停止命令。基準期間は、90日。
終わりに
海外売春に関しては、売春目的の日本人女性の単身渡航がアメリカ入管で拒否される事態にまで発展した。大久保公園の売春の客待ちはSNSで海外に拡散し、なんと観光スポット化しているらしい。
ホストクラブなどの売掛金で売春が発生しているのはなにも最近始まった事では無い。海外にまで問題がいって初めて国会が動いた印象を受ける。某芸能事務所の性加害問題もそうだが、外国から「それおかしいよ」と言われてようやくおかしいと気付く(面倒くさいから係わらなかっただけかもしれないが)のは日本人の負の国民性か。
新風営法関連
⇒新正風営法:第18条の3(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)
⇒新正風営法:歌舞伎の看板を黒く染めた通達
⇒新正風営法:法人に新たに追加された欠格事由:第7号 密接な関係を有する法人
外部リンク
・かおるTV(YouTube)
・悪質ホストクラブ対策について(警視庁HP)
・栃木県風俗営業許可関係
・群馬県風俗営業許可関係
・埼玉県風俗営業許可関係
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令
