「客引き」に関して
今回は、法22条「風俗営業者の禁止行為」より「客引き」についてご紹介致します。
「客引き」とは
(1)条文
法22条では、1号と2号に以下のように規定が置かれています。
1号 当該営業に関し客引きすること。
2号 当該営業に関し客引きするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
(2)定義
解釈運用基準によれば、「客引き」とは、相手方を特定して営業所の客となるように勧誘することをいいます。
客引きに当たらない場合
①通行人に対して、営業所の名称を告げずに、単に「お時間ありますか?」「お触りできます」などと声をかけながら相手に反応を待っている段階では「客引き」にあたらない。
②通行人の側から街頭にたたずむ従業員に声をかけた場合は客引きに当たらない。
③相手を特定する必要があることから、一般通行者に広告を配布したり、看板を提出するような方法により宣伝をする行為は、それだけでは客引きにあたらない。
しかし、上記のいずれの場合もそれを機に従業員から勧誘すれば客引きに当たるとされます。
ホストクラブ関係
(1)法改正に従い、解釈運用基準にはネット勧誘に関する以下の文言が入りました。
マッチングアプリ等のインターネット上で、当初は営業所の客となるよう勧誘する目的を秘して 近付き、交際関係に至った段階で来店を求めるような場合であっても、「客引き」に該当し得る場 合もあるものと解される。
SNSによる顧客勧誘はホストの常套手段なのでそれを踏まえた追加文言でしょう。このことは、あまりにしつこい勧誘は本条違反による罰則の可能性があることを意味します。
(2)改正前から記載があった文言ですが今でも良くある光景でしょう。
ホストクラブの従業者が、通行人の女性に、個人的な交際の申込みや接客従業者の募集を装って声を掛け、その身辺に立ちふさがったり、つきまとったりしている場合についても、例えば、黒服を着てビラ等を所持しているなど、客観的な状況から「客引きをするため」の行為と認められるときは、同号の行為に当たる。
その他
・店舗の前に従業員が立ち続けるような行為は、周辺地域の雰囲気を害することもあるが、勧誘をしない限りは単なる「客待ち」であり、本合違反にならない。
・客引きに当たらない場合であっても、その際に、相手方の前に立ちふさがったり、相手方につきまとうことは、2号のつきまとい行為に該当する。
・「客引き」に関しては本法の他、迷惑防止条例の中でも規定が置かれている。
○栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例
(不当な客引き行為等の禁止)
第8条 何人も、公共の場所において、他人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 次に掲げる行為及び当該行為を仮装したものについて客引きをすること。
ア 異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供すること。
イ 専ら、性的好奇心をそそる映画、演劇、演芸、見せ物その他これらに類するものを観覧させること。
ウ 専ら、性的好奇心をそそる物品で、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(昭和59年政令第319号)第4条各号に掲げるものを販売し、又は貸し付けること。
エ 歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなして客に飲食をさせること。
(2) 前号アからエまでに掲げる行為(同号エに掲げる行為にあっては、通常衣服等で覆われている下着又は身体に接触し、又は接触させる役務の提供を伴うものに限る。)及び当該行為を仮装したものについて、人に呼びかけ、又はビラその他の文書若しくは図画を配り、若しくは提示して、客となるよう誘引すること。
(3) 次に掲げる行為を行う役務に従事するよう勧誘すること。
ア 第1号ア又はエに掲げる行為
イ 性的好奇心をそそる写真又は映像を撮影するための被写体となること。
(4) 第1号及び前号に掲げるもののほか、人の身体、衣服、所持品等をつかみ、進路に立ちふさがり、又はつきまとう方法により、客引きをし、又は役務に従事するよう勧誘すること。
2 何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に前項の規定に違反する行為を行わせてはならない。
3 何人も、第1項第1号から第3号までに掲げる行為(以下この項及び次項において「客引き等」という。)の状況等を勘案してこの項の規定による規制を行う必要があると認められるものとして公安委員会規則で定める地域内の公共の場所において、客引き等を行う目的で公衆の目に触れるような方法により、客引き等の相手方となるべき者を待ってはならない。
4 警察官は、前項の規定に違反して客引き等の相手方となるべき者を待っていると認められる者に対し、当該客引き等の相手方となるべき者を待つことをやめるべき旨を命ずることができる。
(平19条例33・追加、平20条例17・一部改正)
実際に客引きで検挙された人の話し
まれに私服警察官が繁華街を巡回し、客引きに関して取締りをする場合があるそうで、実際に検挙された人から話を聞いたところによると
①警察官は2~3名で行動
②声をかけた時点でなにもいってこないし、付いてくる。
③店の前についていざ入ろうというところで肩を叩かれ「わかるよね」と言われるらしいです。
違反の効果
客引きを行なって処分された場合の罰則は以下になります。
量定区分 B
40日以上6ヶ月以下の営業停止命令を基本として荷重軽減
指示処分の前置不要
終わりに
繁華街に行くとまれに客引きをやっている場合がありますが、罰則が指示処分無しの営業停止だとなかなかのリスクがあることがわかります。風俗営業は広告の規制もあるためなかなか集客が厳しいかもしれませんが人脈や立地で優位性をとり、客引きは厳に慎みましょう。
外部リンク
・かおるTV(YouTube)
・悪質ホストクラブ対策について(警視庁HP)
・栃木県風俗営業許可関係
・群馬県風俗営業許可関係
・埼玉県風俗営業許可関係

