【完全解剖】「接待」の境界線|風営法が定める絶対ルールと経営者が守るべき一線

 夜の街で飲食店を営む者にとって、最も恐るべき、かつ曖昧な概念。それが**「接待(せったい)」です。

 多くの経営者が「カウンター越しなら大丈夫」「隣に座らなければセーフ」という都市伝説を信じ、知らぬ間に無許可営業(風営法違反)の深淵に足を踏み入れています。警察の立入調査が入ったその時、「知らなかった」という弁明は一切通用しません。

 本稿では、風営法における「接待」の定義を法的根拠に基づき徹底解剖し、現場で判断に迷う具体的なケーススタディ、そして事業を守るための戦略的思考を解説します。

 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)において、接待とは以下のように定義されています。

「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」

この抽象的な言葉こそが、すべての混乱の元凶です。しかし、警察庁の解釈運用基準を読み解けば、その正体は明確になります。 重要なのは以下の3要素です。

  1. 特定少数の客に対して(不特定多数ではない)
  2. 継続して(一時的ではない)
  3. 単なる飲食の提供を超える会話やサービスを行うこと

つまり、飲食店の本質である「食事や酒の提供」を主目的とせず、「従業員との会話や触れ合い(慰安)」を主目的として提供する場合、それはもはや飲食店ではなく「風俗営業」となるのです。

 運用基準に示された定義を、実際の店舗運営(特にガールズバー、スナック、コンカフェ等)に当てはめて解説します。

① 談笑・お酌:カウンター越しの攻防

 最も誤解が多い領域です。「カウンター越しなら接待にならない」は完全な誤りです。 物理的な距離や遮蔽物の有無に関わらず、「特定の客の相手となって継続的に談笑する」行為は接待とみなされます。

  • OUT: 特定のキャストが特定の客の正面に定着し、マンツーマンで会話を続ける。
  • SAFE: 複数の客に対して平等に目配りし、注文処理や片付けの合間に社交儀礼的な会話(天気の話や地域ニュース等)を交わし、速やかにその場を離れる。

② カラオケ(歌唱):デュエットの落とし穴

スナック等で日常的に行われている行為にも危険が潜んでいます。

  • OUT: 特定の客の歌に合わせて手拍子をする、褒めちぎる、デュエット(一緒に歌う)をする。これらは「客を楽しませる演出」=接待です。
  • SAFE: 不特定多数の客に向けて歌うことを勧める、あるいはBGMとして店側が演奏・歌唱する(ディナーショー形式)。

③ 遊戯:ダーツ・トランプ・ゲーム

 ガールズバーやアミューズメントバーで要注意なのがこの項目です。

  • OUT: キャストが客と一緒にダーツやトランプに興じる。これは明確に「共に遊戯を行う」接待行為です。
  • SAFE: 客同士で遊ばせ、プレイヤーとして参加しない。

④ ダンス・ショー

  • OUT: 特定の客の席で、その客のためだけに踊る、見せる。
  • SAFE: ステージ上などで、店内の不特定多数の客に向けて同時にパフォーマンスを行う。(※ただし、深夜0時以降の営業でこれを行うと「特定遊興飲食店」の許可が必要になる場合があります)

⑤ スキンシップ:絶対的タブー

  • OUT: 身体を密着させる、手を握る、客の口元に飲食物を運ぶ(「あーん」行為)。これらは弁解の余地なく接待です。
  • SAFE: 握手などの社交儀礼、泥酔客の介抱に必要な接触のみ。

⑥ 同伴・店外デート

 ここは法解釈が分かれる高度な領域ですが、店外での同伴やデート自体は直ちに風営法上の接待とはみなされない傾向にあります。しかし、「店外でのサービスが店舗での売上に直結するシステム(同伴料など)」として一体的に運用されている場合、全体の営業実態として判断されるリスクがあります。

 これから店を開く、あるいは現在の営業形態を見直す貴方には、2つの道しかありません。

道その1:【風俗営業許可(1号許可)】を取得する

 堂々と接待を行いたいなら、この許可を取るのが正道です。

  • メリット: キャストが隣に座り、談笑し、お酌をし、カラオケのデュエットも可能。高単価なサービスを提供できる。
  • デメリット: 原則として深夜0時(地域により1時)までの営業に限られる。立地要件(保護対象施設の距離制限)が厳しい。

道その2:【深夜酒類提供飲食店】として生きる

朝まで営業したいなら、接待を完全に封印する必要があります。

  • メリット: 深夜・早朝まで営業可能。
  • 条件: 「接待」とみなされる行為を徹底的に排除するマニュアルと教育が必要。キャストには「特定の客に張り付かない」「長時間の立ち話をしない」「ローテーション制にする」等の厳格なルールを課す。

 「周りの店もやっているから」という甘い認識は捨ててください。警察は実態を見ています。 ガールズバーと称しながら、実態はカウンター越しのキャバクラになっていないか? スナックと称しながら、ママが客の隣で長時間話し込んでいないか?

 無許可営業の罰則は個人なら「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」、あるいはその併科、法人なら「3億円以下の罰金(両罰規定)」です。さらに5年間の営業許可取得欠格期間がつきます。一度の摘発で、貴方のキャリアは5年間停止するのです。

 貴方の店舗が提供したい価値は「酒」なのか、「会話」なのか。 その本質を見極め、適切な許可を取得することこそが、長く繁栄する城を築くための第一歩となります。

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外部リンク

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悪質ホストクラブ対策について(警視庁HP)
栃木県風俗営業許可関係
群馬県風俗営業許可関係
埼玉県風俗営業許可関係
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令